2025-09-02-Tue

マルチクリエイター「瀬兎一也」さんの特別授業

 
  • デザイン美術学科
  • 芸術イベント

気鋭のマルチクリエイター 瀬兎一也さんの特別授業を開講

“画像説明”

デザイン美術学科グラフィックデザイン・イラストレーションコース(現グラフィックデザインコース)の卒業生であり、イラストレーター、Live2Dモデラー、YouTuberなど多彩なジャンルで活躍している瀬兎一也さん。大阪芸大短大部の入学案内の表紙イラストレーションでもおなじみで、キャラクターの持つ独特の世界観と高度なLive2Dテクニックが人気を集めています。
2025年6月、瀬兎さんによる特別授業が、デザイン美術学科の1年生を対象にリモートで行われました。大教室を埋め尽くす学生たちの表情は真剣そのもの。学生時代の体験談から就活や創作のアドバイスまで、アートやデザインを学ぶ学生にとって瀬兎さんの講義はとても意義深いものです。学生たちのモチベーションを高める、内容の濃い90分でした。

  • “画像説明”
  • “画像説明”

『未体験だからこそ、あえてグラフィックデザインを選択した』

授業の内容は、事前に学生たちにアンケートを取り、その質問に答える形で行われました。瀬兎さんは100通を超える質問のすべてに目を通し、検討を重ねた上でピックアップしたそうです。

最初の質問は、「学生時代は何をしていましたか?」。学校に通う傍ら、VTuberの活動も同時に行なっていた瀬兎さん。寝る時間を削って制作していたため、徹夜明けで授業に出ることもしばしば。そんなエピソードに超多忙な学生時代が伺えました。
「なぜグラフィックデザインコースに進んだのですか?」という問いには、「自分の知らない分野の学びだから」と一言。デジタルやイラストレーションは入学前から独学で制作した経験があったので、あえて未経験のグラフィックデザインを選び、スキルを身につけたそうです。そしてそこで得た知識や経験は、今のクリエイター活動にも活かされていると語りました。

「1年生の前期はいろいろな授業が試せるので、ボクもグラフィックデザイン、イラスト、マンガ、フィギュアやデジタルなどたくさん受講しました。みなさんもぜひいろいろ試してみて、自分の進むべきコースを見つけてください」卒業生ならではの体験に基づくアドバイスは、学生たちの心にしっかり届いたようでした。

  • “画像説明”
    学生たちの質問に答える形式で講義が進みます。
  • “画像説明”
    瀬兎さんの言葉に熱心に耳を傾ける学生たち。

『就活は大切。万全なポートフォリオをつくり、早めにスタートを』

「学生時代にやっておけばよかったと思うことは?」の質問には「就活です!」とキッパリ。2年後に社会に出る短大生は就活にいち早く取り組むことが大切だと語り、自ら「2年生になってスタートしたのは遅かった」と反省の思いを述べました。そしてポートフォリオ制作の重要性を説き、志望する企業に合わせた作品を準備すること、そのためにはさまざまな作風の作品をつくってみることを力強くアドバイス。瀬兎さんは思い通りにいかない就活の中で、企業研究と多様な作品制作を実行し、最終的にゲーム会社へ内定しました。
「なぜ、フリーにならず企業に就職したのですか?」という質問もありました。「フリーをめざすにせよ、企業で働く経験があった方がいい」というのが瀬兎さんの持論です。「制作のノウハウや知識が広がる」「制作のプロセスがよく理解できる」「経験値が上がる」「依頼や交渉の仕方が身に付く」など、企業の中で鍛えられることは多く、フリーランスになった時に必ず役にたつと語ります。「企業にはノウハウの蓄積があり、それを先輩方から教えてもらうことができる。ボクは就職してよかったと思います」そして「ぜひみなさんも就職を視野に入れて将来を考えてみてください」と学生たちにエールを送りました。

  • “画像説明”
    実践的でわかりやすいアドバイスに納得の様子
  • “画像説明”
    細かくメモを取る手にも力が入ります。

『とにかく描く!つくる!やらない理由を探さなくていい』

「どうしたらうまくなりますか?」「どうやったらオリジナリティが出せますか?」という質問には「とにかく作品をつくること」と断言します。「上手になる近道や効率的な方法はありません。デジタルツールがなければアナログでいいから「描く!つくる!」これ一択だ」と語ります。その言葉の熱量の高さはリモートでもしっかりと伝わってきました。
「やらない理由を探さなくていい!」自分自身もそうして道を切り拓いてきたという瀬兎さんならではのパワフルなアドバイスです。

会場の質疑応答タイムでは、多くの学生たちから手が挙がりました。「どんな方法で絵柄を研究されましたか?」「VTuberとして上手に話すコツはありますか?」「アバターを使って配信する理由とメリットは?」「影響を受けた作品はありますか?」などさまざまな質問が投げられ、その1つひとつに真摯に向き合い、言葉を選びながらていねいに答える瀬兎さんの様子が印象的でした。あっという間に時間は過ぎ、特別授業が終了。

「不安になるかもしれないけれど、失敗や間違いを恐れないでください。学生は時間がたっぷり使える時です。今のうちに間違ってもいいから、描いたり、つくったり……トライアンドエラーを繰り返して、まず一歩を踏み出しましょう」
瀬兎一也さんのリアルなアドバイスやクリエイターとしての仕事ぶりは、学生たちに大きな刺激を与えたようです。1年生の成長を促す、まさにスペシャルな授業でした。

“画像説明”
質疑応答では満席の教室からいっせいに手が挙がりました。
  • “画像説明”
  • “画像説明”

作品づくりについて時には一歩踏み込んだ質問も。

  • “画像説明”
    瀬兎一也

    イラストレーター、Live2Dモデラー、YouTuber、歌手などマルチに活動するクリエイター。
    大阪芸大短大部を卒業後にゲーム会社へ就職し、現在はフリーランスに。
    YouTubeの登録者は27万人。
    2021年にLive2D Creative Awardsで最優秀グランプリを獲得。
  • 瀬兎一也さんからひとこと

    いろいろな質問に答えながら、学生時代の自分が聞く立場ならどう思うだろうか、そんなことを考えながら話していました。「こうしたらいいよ」とアドバイスされても、できるかなと。(フリーランスで仕事をしている)今だから言えるんですね。「何から始めたらいいかわからない」「何がわからないのかもわからない」など、迷ったり悩んだりしている様子が感じられる質問も多かった。先が見えていたら頑張れる。でも走りたくても道が見えない……。
    ボク自身も同じ道を通ってきたので、今回の授業がそれを解決する一助になればうれしいですね。そして悩んだ時は先生に相談してください。とにかく諦めずに続けてほしいと思います。大事なのは継続です!

  • この講義に参加してみて

    私はイラストやアニメなど多様な創作技法に興味があり、マルチに活躍されている瀬兎さんは憧れの存在です。YouTubeなどの配信を見て、作画のすばらしさやトーク力、キャラクターの繊細な動きなど、いつもその凄さに圧倒されています。今日の講義中も画面に釘付けでキャラクターの繊細な表情に感動しました。講義内容も創作のために工夫や努力されていること、就活の実情やポートフォリオのつくり方、作品を売り込むためのノウハウなどリアルなお話が聞けて、とても勉強になりました。ご自身の経験談なので説得力があり、「私も甘えていられない」と気持ちが引き締まりました。頑張ろうという意欲が湧いてきて、講義を受けて本当に良かったと思います。

  • “画像説明”
    デザイン美術学科1年生 岡崎美咲さん