2025-03-25-Tue

メディア・芸術学科 舞台芸術コース卒業公演2025 レポート

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「梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ」で華やかに公演

2025年2月27日(木)、舞台芸術コースの卒業公演が開催されました。ハレの舞台となるのは、関西トップクラスの劇場としてプロの舞台人も憧れる「梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ」です。第17回となる今回の演目は、手塚治虫さんの戦争体験をもとにした 『マンガの虫は空こえて』。
ストーリーの舞台は大阪芸大短大部とも縁が深い宝塚市、さらにマンガの神様と称される手塚治虫さんがモデルとあって、学生たちの熱量も高く、見応えのあるすばらしい卒業公演となりました。

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手塚治虫さんの原作をもとに戦争中を果敢に生きた少年の物語

企画・監修は加納竜先生、演技指導は芳本美代子先生が行い、演出は本学の教授であり、劇作家や演出家、劇団の主宰としても活躍する岩崎正裕先生が務めました。『マンガの虫は空こえて』(脚本・島守辰明氏)は、2019年に地元の兵庫県立ピッコロ劇団が岩崎先生の演出のもとに初演されており、先生にとってもひときわ思い出深い作品です。学生たちは手塚治虫さんの原作を読み、戦時下の状況を想像しながら、それぞれの役づくりに向き合ってきました。軍国主義の時代特有の差別的なセリフもありますが、岩崎教授が当時の日本人の道徳観や価値観を説明してくださり、学生たちもセリフの意味や登場人物の心情を少しずつ理解して、本公演に臨みました。

2幕17場。役になりきった学生たちの熱演

ストーリーはマンガ大好き少年の主人公が、幻の蝶ゼフィルスを追いながら、自分の描いたマンガを介して友人たちと出会い、理不尽な経験をしながらも友情の大切さ、自由への渇望、平和への強い思いを描く物語。兵役を逃れて憲兵に追われる恋人たち、自ら軍隊を志願する親友、マンガ禁止を命じる教師、息子を戦場に送りながらもたくましく生きる母など、さまざまな人と出会う中で、考え、行動し、時に絶望しながらも未来を信じて主人公が立ち上がっていく姿を描いています。

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2幕17場、2時間半の長丁場でセリフの量も多く、1人で2役を演じる学生もいて、本番を迎える緊張感は並大抵ではありませんでした。しかし、ひとたび幕が上がれば、物語の中に入り込み、年齢や性別を超えた役を堂々と演じました。つらいシーンが続く中にもユーモラスな一コマがあり、時に観客の笑いを誘っていました。

戦争中、終戦、戦後へと。加納竜先生も特別出演。

1幕は子どもたちを中心に、戦時下に生きる人々の様子がさまざまなエピソードとともに展開され、2幕は悲惨な大阪大空襲を経て、終戦を迎え、戦後から現代まで復興していく状況が、昭和、平成の流行歌とともに描かれます。

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そして、全幕を通して時折り登場するのが、映画監督役を演じる加納竜先生。思い通りの作品が撮れない映画監督の存在を通して、『表現の自由』が脅かされる理不尽さを伝えました。舞台の上では役者加納竜として、学生たちとともに観客を楽しませました。

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観る人の心に響くダンスや合唱の名シーン

芝居だけでなく、幻の蝶ゼフィルスをはじめとする、美しいダンスシーンも見どころのひとつ。手塚治虫さんをモデルとする主人公、大寒鉄郎を魅了する蝶たちの舞、宝塚歌劇団のイメージするダンスなど、ポピュラーダンスコースの河邉こずえ先生指導のもと、練習を重ねてきました。
そして平和やふるさとへの思いを高らかに歌い上げるコーラスシーンも圧巻です。観客席に向かって、メッセージを送るように懸命に歌い、ストーリーを象徴する印象的なシーンとなりました。

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照明・音響・美術で舞台をドラマティックに盛り上げる

照明や音響、舞台美術を手がけた舞台制作専攻の学生たちも、2年間で培った技術を存分に発揮しました。舞台監督を務める竹内一秀先生、井之上淳先生をはじめ、それぞれの担当教員の指導のもとに、岩崎先生の思い描く『マンガの虫は空こえて』の世界観を表現すべく、どのシーンにも緻密でメリハリのある制作プランをたてました。暗転のタイミング、正確なスポットライト、大空襲の音響、静かな中で響く演者の声、さまざまな効果音。「坂」を見せ場にした舞台づくりや、大道具、小道具の細かいところまで気を配り、演者と制作者が一体となることで舞台をドラマティックに盛り上げ、観客を物語の世界に引き込みました。

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拍手が鳴り止まない感動のフィナーレ

最後の場面は現代の宝塚市。マンガ家として成功し、年老いた主人公が妻とともに思い出の場所を訪れます。そこでゼフィルスを見つけた少年に出会い、自分のGペンを渡します。
「新しい時代を君が描いてくれ。君たちの手で!」
エンディングの言葉は未来への期待を込めた力強いメッセージ。学生たちの熱演により、このメッセージが強烈に印象づけられました。

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そしていよいよフィナーレ。興奮冷めやらぬ学生たちに惜しみない拍手が送られました。この舞台をつくり上げた経験は大きな自信となり、未来を切り拓いてゆく原動力になる。そんな確信が持てる卒業公演でした。

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    舞台芸術コース[身体表現専攻]
    亀山 愛月/大寒鉄郎役

    手塚治虫先生がモデルの大寒鉄郎を演じました。幕が上がった瞬間、多くのお客様が来場されていることに驚き、それからは無我夢中でした。セリフ量が多い上に、虫取り網を振り回したり坂道を走り回ったり、動きが激しくて体力的にキツい役でしたが、なぜか本番直前まで動き回っていました。じっとしていられない気持ちだったんです。一番印象的だったのは、ヤグラの上で友だちの京子ちゃんと大空襲の大阪の街を見下ろすシーン。それから2人は別の道を歩むのですが、とても感慨深く心に残っています。先生の指導はとてもきめ細かくていねいで、戦争映画をお手本に「この人の演技に近づけてみて」と具体的におっしゃることもありました。「シアター・ドラマシティ」という一流の劇場で、素晴らしい作品を演じることができて幸せです。

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    舞台芸術コース[舞台制作専攻]
    小河 美結さん/照明担当

    舞台制作専攻の学生たちは本番当日に現場に入り、初めて現場の機材に触れます。自分たちが思い描いた通りの舞台がつくれるのか、演出の岩崎先生の世界観を表現できるのか、開演まですごく不安でした。私が担当したのは照明のプランニングです。台本と役者さんの動きを見ながら、場面ごとに照明を考えていくのですが、先生に相談すると「たとえばブルーならどんなトーンのブルーなのか」「悲しさを表現するならどんな悲しさなのか」など具体的な課題を提示され、それがとても難しくずいぶん悩みました。でも突き詰めて考えたことで成長できたと感じています。私たちの学年はみんな仲が良く、お互いに頑張ってきたからこそフィナーレは本当に感動的でした。仲間に恵まれたことも2年間の大きな成果でした。