2024-08-20-Tue

芸短パフォーマンスフェス2024 開催

 
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「パフォーマンス」系コースがクロスオーバーした新たなフェスが幕開け『芸短パフォーマンスフェス2024』

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2024年8月2日(金)・3日(土)、大阪芸術大学短期大学部メディア・芸術学科による『芸短パフォーマンスフェス2024』が兵庫県伊丹市のAI・HALL(伊丹市立演劇ホール)で開催されました。同イベントは、舞台芸術コース身体表現専攻、声優コース、ポピュラーダンスコースというパフォーマンス系のコースに舞台芸術コース舞台制作専攻の学生たちが舞台の裏側を担い、演目を作り上げて舞台を披露するというもの。声優コースは「Voice パフォーマンス、躍動♡」、舞台芸術コースはポピュラーダンスコースとコラボレーションして「『夏休み』明日への約束」(作 内藤裕敬「夏休み」より)を披露しました。

●学生たちがプロフェッショナルと共に立つ貴重な舞台

演じる上で必要な基礎や音響、照明、美術などのスキル修得を目指す「舞台芸術コース」(身体表現専攻・舞台制作専攻)、本格的な録音スタジオを使用して声の表現を磨く「声優コース」、あらゆるジャンルのダンスや可動域を広げる筋力トレーニングの実践に励む「ポピュラーダンスコース」。『芸短パフォーマンスフェス2024』は、この3つのコースの学生たちの手によって作り上げられ、初開催を迎えました。

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イベントの第1部は、声優コースによる「Voice パフォーマンス、躍動♡」。テレビアニメの名作『未来少年コナン』の中のエピソードの一つを題材に、学生が朗読劇に臨みます。ゲスト声優として、テレビアニメ『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ系)のおじいちゃん・友蔵役などを担当する人気声優・島田敏さん。加えて舞台芸術コース加納 竜教授が登場しました。島田さんはアドリブも挿みながら深みのある声でパフォーマンス。ただ学生たちもその迫力にひるむことはありません。主人公であるコナン役の学生はアクションシーンで臨場感のある息遣いをみせ、ヒロインであるラナ役の学生は繊細な心情などを体全体で使って表していました。

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    オープニングでは、声優コースの学生たちが勇ましい声を響かせながら迫力満点の踊りも披露。
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    第1部の朗読劇「Voice パフォーマンス、躍動♡」では、人気声優・島田敏さんがスペシャルゲストで登場。複数の役の声を演じ、観客を魅了。

第2部は、舞台芸術コース、ポピュラーダンスコースによる舞台「『夏休み』明日への約束」。内藤裕敬さんの戯曲『夏休み』の舞台本番に挑もうとする若い劇団員たちが味わうプレッシャーや悩みを、歌やダンスもまじえて描いた同作。驚いたのは、物語の導入部分。第1部が終わり、第2部を始めるために転換やセット準備をしていると思いきや、そのセッティング自体が物語の一部になっており、観客は気づかない間に作品の中へと誘われました。劇中では日本で起きた大きな災害などにも言及し、今を生きることについて訴えかけるメッセージ性が心を打つものがありました。

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    第2部の舞台「『夏休み』明日への約束」では、学生たちが加納竜先生と殺陣を演じる場面も。
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    「『夏休み』明日への約束」でポピュラーダンスコースの学生たちは、自分たちで振付を考えたオリジナルダンスなどを披露。
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    「舞台芸術コース」の舞台制作専攻の学生たちが担当した音響、照明、美術などが、作品の世界観をより深める。

そんな第1部、第2部の作品を裏方で支えたのが、舞台照明や音響・音楽、舞台美術などです。いずれも作品の世界観をより際立たせるものとなっていました。この公演は各コースの交流によって実現した『芸短パフォーマンスフェス2024』。大阪芸術大学短期大学部の新たな名物イベントとなりそうな予感があり、今後の開催への期待が膨らみました。

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    加納竜(メディア・芸術学科舞台芸術コース 身体表現専攻 教授)
  • ●教員インタビュー

    『芸短パフォーマンスフェス2024』はもともと、私が発起人となり企画が始まりました。きっかけは、2020年から約3年間続いたコロナ禍。その影響で当時の学生たちは、授業でも思い切った芝居などがなかなかできませんでした。それはコロナ禍に中学、高校へ通っていた若者たちも同じだったはず。ただ、ようやくコロナ禍の緊張感が和らぎ、のびのびとパフォーマンスができる状況になりました。そういったタイミングで大阪芸大短大部へ入学した学生たちには、たまっていた気持ちを晴らすように、思いっきり舞台をやらせてあげたいと考えました。そこで立ち上げた『芸短パフォーマンスフェス』。一番の特徴は、学生がプロと一緒に舞台に立つことができる部分。声優の島田敏さんにもスペシャルゲストでお越しいただきましたが、一流のプロフェッショナルと共演することで得るものは必ずあります。というのも私も20歳のとき、ドラマ『同心部屋御用帳 江戸の旋風II』(フジテレビ系)で加山雄三さん、小林桂樹さん、露口茂さん、秋野太作さんなど、“ホンモノ”の銀幕スターたちとお仕事ができた経験が大きかったからです。そこで俳優をやっていく度胸がつきました。ただ、若いときはどうしても先輩俳優に自分から話を聞きにいきづらいところもありました。私もかつて、ある作品でご一緒した大空眞弓さんから「先輩の金子信雄さんと共演しているんだから、話を聞きに行きなさい」と言われたのですが、当時は若さもあって「自分で考えます」となっていたんです。今となっては「話を聞きにいきなさい」という言葉の重要さがよく分かります。ですので今回のフェスでは、学生たちには、先生としてではなく俳優の先輩として接するようにし、「もし今後も舞台に上がり続けるならいずれ気づけるようなことを、ちょっと早めに伝えます」という感覚でアドバイスしました。これからも『芸短パフォーマンスフェス』は続けていきたいと思いますし、そこで得られる経験は、俳優や声優の世界はもちろんのこと、卒業後に別の仕事に就いてもきっと生きるはず。そういうステップの場として、本学を活用してほしいです。

  • 学生インタビュー

    奥村藍菜(舞台芸術コース身体表現専攻)
    私は小さい頃から人前に立つのが好きで、芸能スクールでダンス、歌、演技を学んでいました。そのなかでも特に興味を持ったのが演技でした。台本をもらって徐々にキャラクターに近づけていき、いつもの自分とは違う人物になりきれるところがおもしろいです。また、共演者やスタッフのみなさんと作品を作り上げていく過程も舞台の魅力だと感じています。今回の「『夏休み』明日への約束」の稽古中も、最初は共演する同級生たちに対し「なぜそういう風に感じているのか」、「自分はこうして欲しい」と考え、進めていきました。でもそれは良い意味でのぶつかり合いなんです。そして稽古が進むにつれて意思疎通ができていき、相手が考えていることも読み取れるようになって一体感が生まれていきました。そうやって一つひとつを積み上げながら作るところが、学生の舞台の良さだと感じています。また加納先生からは、「もっと感情を爆発させよう」とアドバイスをしてもらいました。ケンカの場面があったのですが、普段の私はそういう状況になると自分から気持ちをシャットアウトしがち。いつもの自分ではなく、もっと踏み込んで感情を表現することを意識しました。私はまだ役者としての自分の強みを見つけていませんが、マルチにやっていけるところを持ち味とし、自分がこれから進む道にも生かしていきたいです。

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  • 学生インタビュー

    黒木あゆみ(ポピュラーダンスコース)
    舞台「『夏休み』明日への約束」ではダンスチームのメンバーを演じましたが、ダンスコースの私にとっては、台詞や演技がとても新鮮に感じました。ただ、限られた稽古時間のなかで演技を身につけるのはやはり難しかったです。先生方からは「あまり考えすぎず、自分が思うように、自由に、そのままをさらけ出していこう」とご指導いただきました。キャラクターを演じる上で普段の自分とはそれほどかけ離れた感じではなく、ありのままの私を出しているところが多かったです。またなにより、演技を学んでいる身体表現専攻の学生のみんなとのやりとりも貴重な機会になりました。別のコースの学生達と話すことで、今までの自分にはない考え方を得ることができました。そんな今回の舞台であらためて感じたのは、ダンスの奥深さです。身体表現専攻のみんなは、台詞や身振りで作品のメッセージを伝えていく。一方でダンスは、言葉を発さずに思いを訴えかけていく。作品のなかにも3つのダンスシーンがあったのですが、どういう風に踊れば気持ちを受け取ってもらえるのか、いろいろ試行錯誤しました。私は卒業後、ロサンゼルスへ留学してさらにダンスを学ぶ予定です。もともとヒップホップが得意でしたが、大阪芸大短大部でいろんなジャンルも踊れるようになったので、その力を伸ばしていきたいです。

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  • ●学生インタビュー

    藤原千波(声優コース)〔右〕
    私は「Voice パフォーマンス、躍動♡」の『未来少年コナン』の朗読劇で、ヒロインのラナの声を担当しました。彼女は一人で生きていける強さを持っていますが、まだまだ幼さも感じられ、自分が信頼する人に甘えたいというところもあります。そういった多面性を意識して演じました。稽古を重ねるごとに、そういうラナの特徴もつかめていけました。でも私はもともと、感情を表現することが苦手だったんです。ラナを演じる際も「どうすればいいかな」と悩む部分がたくさんありました。そんなとき先生方から、「最初は考えすぎずに、湧き上がってくるものを全部出しましょう」とアドバイスをいただきました。大きいリアクションを意識するなどし、とにかく一旦すべてを出し切ってから、次に踏みとどまったり、引き算したりするところを見つけていく。今回の朗読劇では、そのやり方を学ぶことができました。また、島田敏さんとご一緒できたのも貴重な経験になりました。島田さんは感情の出し方がとてもスムーズ。自然な流れでキャラクターの感情を動かしていらっしゃり、勉強になりました。なにより今回の『芸短パフォーマンスフェス2024』では、あらためて「声の世界は素敵だな」と思いました。今後はナレーションのお仕事などを目指しつつ、作詞作曲もおこなっているのでアーティスト活動もやっていきたいです。

    黒田亜海(声優コース)〔左〕
    私は『未来少年コナン』の朗読劇では、食いしん坊のジムシーの声を担当しました。演じる上で意識したことは、普段の何倍、何十倍も感情を大きく出すこと。時には、自分が持ち合わせていない気持ちを出すことも求められました。特にジムシーは純粋無垢で、見るものすべてを新鮮に感じるキャラクター。映像のなかでジムシーが少しでも動いたら、自分もなにかしら声を出す。そういうところに気を配るなど、さまざまな工夫をしながらキャラクターを作り上げていきました。また先生たちと話をするなかで個性的な声をしている印象を持ったので、喉を締めてガサガサした声を出すように稽古をしていきました。舞台本番では、島田敏さんの演技がとても勉強になりました。台本に書いていない要素もどんどん入れていらっしゃって、しかも私たちでは絶対に思い浮かばないようなアドリブばかり。着眼点も細かく、「そういう言葉があったか」と驚きの連続でした。そんな今回の舞台を通してあらためて、アニメの声優は年齢や性別をこえるだけではなく、人間ではないものになりきれるところがおもしろいと気づきました。私はまだこれからの進路に迷いがあるのですが、どんな仕事に就いても「そういえばこんなことがあったな」と大阪芸大短大部で学んだことを思い出しながらやっていきたいです。